ハイダイナミックレンジ (HDR) の追求は、私達がいつも視ている、体験している人間の視覚システム (HVS) を理想とし、それに近づくことです。
AJA のプロダクトマネージャー Bob Hudelson 氏が、リアルタイム映像制作で HDR を用いる利点と、HDR により維持できる映像の芸術性について説明します。
既存のインフラとテクノロジーで得られる帯域幅の制限内で人間の知覚に近づくという、目標を達成するために、彩度と輝度のサンプリング、ビット深度、ガンマに対する対数曲線の長所と短所も考慮した、これまでにない優れた曲線が必要になりました。
* PQ を表現する規格は 2 つあります。オープン規格の HDR 10 と Dolby Laboratories の独自システム Dolby® Vision です。どちらの規格も、輝度の範囲と可能なコントラストのステップを通じて、ビットを最も効率的に使えるよう設計されています。
PQ は SMPTE ST 2084 および BT.2100 で規格化されており、PQ はバンディングが最小可知差異 (Just Noticeable Difference) 未満となるよう曲線を定義します。PQ 曲線はコードを最も効率的に使用するので、必要なビット深度を最小限に抑えます。
HDR がディスプレイに送信された際には、鮮やかな画像が期待されます。滑らかなグラデーションを提供し、視聴者を満足させるためには、カラーと輝度の範囲内に十分なステップ数を提供する必要がありました。Dolby Vision は、映像がテレビでどう見えるかを定義する新たな規格です。各コード値が特定の明るさを定義する「Display referred (ディスプレイ基準)」システムです。 つまり、ユーザー側で輝度調節は行いません。
HDR 規格は相互運用性を保証し、混乱を回避します。いくつかの規格には、適切なカラースペースの管理に役立てるためにビデオストリームにメタデータが含まれています。これにより、アプリケーション毎に表示を正確にし、改良されたディスプレイの能力を最大限に引き出します。
Dolby Vision は 4096 階調の 12-bit データを HDMI ケーブルで送信する方式を採用していて、滑らかなグラデーションを表現できます。一方、現在ほとんどのプロダクションのパイプラインでは、 10-bit で利用可能な 1024 階調またはステップが利用されています。HDR 10、Dolby Vision、HLG は、これらのジレンマを解決するために設計されました。輝度と色域の範囲内から最適な曲線を効率的に選択し認識できるバンディングを最小限に抑え、人間の視覚系により近い驚異的な結果を達成します。
HDR 10 は CTA (Consumer Technologies Association) によって定義された規格です。HDR 10 は SMPTE ST-2086 "Mastering Display Color Volume" の静的メタデータを使用して、マスターモニターのカラーキャリブレーションデータを送ります。MaxFALL (Maximum Frame Average Light Level) と MaxCLL (Maximum Content Light Level) の静的値も同様に送信できます。HDR 10 は、様々な企業でサポートされているオープン規格です。
HDR 10+ は HDR 10* から構築された規格で、動的メタデータなどを追加し、シーンまたはショット毎の変化を可能にします。HDR 10+ では、ディスプレイの色空間などを認識可能になります。
サムスンはこの規格開発の主要な推進者です。HDR 10+ は最近多数の企業に採用され、アマゾン、サムスン、パナソニック、20世紀フォックス (FOX)、ワーナー・ブラザースなどを含む HDR 10+ アライアンスが結成されました。
HLG (ハイブリッドログガンマ) は、BBC と NHK が共同開発した HDR 規格です。HLG は輝度値を相対的に扱うのに対して、PQ は絶対値として扱います。HLG は広色域向けの BT.2020 規格上に位置し、BT.2100 として知られる規格にも PQ と HLG ダイナミックレンジ は追加されています。HLG 規格はロイヤリティフリーで、HDR ディスプレイと同様に SDR ディスプレイにも互換性があります。HLG は HDMI 2.0b、HEVC 、VP9 でサポートされています。HLG のアピールポイントは、HDR と SDR が同じ信号から提供されていることです。
* HLG はメタデータを含まないため、HLG は全ての HDMI 仕様で動作します。HDMI 2.0b は HDMI 2.0a を拡張した規格です。
ポストプロダクションの最中には、HDR 素材を互換性のあるモニターに表示し、プレビューする必要があります。AJA Desktop ソリューションは、AJA Control Panel が提供する HDR メタデータと HLG のセットアップによって、作業をシンプルにします。
HDR は、ゲーム画面キャプチャ、eスポーツ、VR (仮想現実)、プロジェクションマッピングなどの没入型環境でも活用できます。KONA HDMI を使うと、HDMI ソースを HDR でキャプチャできます。
KONA HDMI は、8 レーンの PCIe 2.0 マルチチャンネル HDMI キャプチャーカードで、業界で定評のある AJA 品質と柔軟性を兼ね備えています。
ゲーム、ストリーミング、VJ、ライブイベントでのスイッチング、ビデオブログ、VR、ポストプロダクション、放送局などに求められる複数のワークフローに応える設計がされています。この強力なキャプチャーカードは、最大 4K/UltraHD 60p のシングルチャンネルもしくは、最大 2K/HD 60p の 4 チャンネルのキャプチャーに対応します。
KONA HDMI は HDR 信号のキャプチャーに対応しています。HDMI 経由で PS4® Pro のような HDR 対応ゲーム機から HDR 信号のキャプチャーが行えます。
HDR に対応したハイフレームレート向けミニコンバーター
SDI で HDR を伝送する規格の進化が続いている一方、HDMI 2.0 の HDR 対応ディスプレイは手頃な価格で入手可能になっています。
3G-SDI から HDMI に変換する AJA の代表的なミニコンバーター Hi5-4K-Plus は、HDR 10 と HLG をディスプレイに表示するワークフローを実現します。
Hi5-4K-Plus と AJA の 無料アプリケーション Mini Config を使って、CTA-861-G や HDMI 2.0a で定義されている HDMI HDR Infoframe のメタデータを加えられます。
コンバーターと PC を繋ぎ、必要に応じて静的メタデータも設定できます。
HDR に対応した 12G-SDI → HDMI 2.0 ミニコンバーター
Hi5-12G は 8 チャンネルのデジタルオーディオがエンベデッドされた 4K/UltraHD/2K/HD の 12G-SDI シングルリンク入力を変換し、2 チャンネルもしくは 8 チャンネルのオーディオと共に HDMI 2.0 で出力します。
12G-SDI シングルリンク入力はリクロックされて SDI ループ出力されるため、精度の高いモニタリングや SDI の伝送経路の簡潔化が行えます。
Hi5-12G シリーズには、ファイバー SFP が搭載されたモデルもラインアップされています。Hi5-12G-R は HDMI の 4K 信号を拡張できるレシーバー (受信機) です。ソースに SDI または光ファイバーで接続し長距離伝送します。
Hi5-12G-TR は、4K/UltraHD のソース信号を SDI または光ファイバーで HDMI の接続先に届けるトランシーバー (送受信機) です。ソース信号は SDI または光ファイバーで別の送出先にも届けられます。
Hi5-12G シリーズ
イベント会場、映写室、施設内にあるディスプレイ、またはスタジアムに設置された大型 LED ディスプレイなどに映す際、Apple ProRes ファイルの素材を HDR 10 や HLG として表示できます。
4K/UltraHD/2K/HD 対応のレコーダー兼プレイヤー Ki Pro Ultra Plus は、ファームウェア 2.0 以降、HDR 10 や HLG の Apple ProRes ファイルを容易にプレイバックしたり HDMI 2.0 互換のディスプレイ上に表示したりできるようになりました。
Ki Pro Ultra Plus は、HLG カメラまたはその他の HLG デバイスの HLG 素材をキャプチャできます。
HDR 波形、ヒストグラム、ベクトルスコープモニタリング
HDR Image Analyzer は、HLG、PQ そして Rec.2020 を含む最新の HDR 規格を効果的に分析する包括的なツールを提供します。8K/UltraHD2/4K/UltraHD/2K/HD コンテンツをリアルタイムに扱える便利な 1RU のデバイスです。I/O が 3G に対応する製品と 12G に対応する製品の 2 つのモデルがあり、必要に応じて選択できます。
Colorfront 社との協業によって開発された AJA HDR Image Analyzer は、カメラ Log フォーマット、SDR (REC 709)、PQ (ST 2084)、HLG を含むあらゆる入力に対応しています。また、色域は HDR 向けの BT.2020 や従来の BT.709 にも対応しています。
あらゆる状況で使用するために特別に設計された 1RU のフォームファクターは、様々なワークフローに適応します。HDR 制作やマスタリングに求められる安定性や予測可能性を提供します。
HDR Image Analyzer のツールセットには、波形、ヒストグラム、ベクトルスコープモニターに加え、基本的なイメージ分析機能も多数含まれています。Nit 明暗レベルメーター、色域範囲外と輝度範囲外のピクセルを簡単に検出できる色域外カラー確認モード、エラーログ機能、ピクセルピッカー、フレーム記憶と画面分割、注視したい領域に水平線や垂直線を表示できるラインモード、オーディオフェイズメーターなどです。
さらに、ARRI®、Canon®、Panasonic®、RED®、Sony® といった主要なカメラのカラースペースも組み込まれています。
HDMI 2.0 → 12G-SDI コンバーターシリーズ
HDMI 2.0 経由で HDR 信号を扱う際は、HDR メタデータの使われ方について、よく理解する必要があります。ソースから HDMI 2.0 ケーブル経由で、HDMI から 12G-SDI に変換する AJA の ミニコンバーター HA5-12G に接続し、AJA の無料ソフトウェア Mini-Config 上の HDR タブを開いて、あらゆる HDR 静的メタデータを読み込みます。
AJA の HA5-12G は 1 系統の HDMI 2.0 入力を 2 系統の 12G-SDI 出力に変換します。2 系統の SDI 分配出力が可能で、各々の SDI 端子から 12G-SDI をそれぞれ 1 本のケーブルで送出可能です。そのため 4K/UltraHD を SDI で転送する際のケーブル数を削減できます。HA5-12G は最大 8 チャンネルの HDMI オーディオ、または 2 チャンネルのアナログオーディオ (RCA) に対応し、8 チャンネルもしくは 2 チャンネルのデジタルオーディオを 12G-SDI にエンベデッドできます。
HA5-12G シリーズには、ファイバー SFP が搭載されたモデルもラインアップされています。HA5-12G-T はシングルチャンネルのトランスミッター (送信機) で、HDMI の 4K 信号を拡張します。シングルモードで 10 km の長距離伝送が可能です。
HA5-12G シリーズ
HDMI 経由の HDR 信号を扱う際は、HDR メタデータの利用について、よく理解する必要があります。HDMI 2.0 のケーブル経由のソースを AJA の HDMI → SDI ミニコンバーター HA5-4K に接続し、AJA の無料ソフトウェア Mini Config 上の HDR タブを開いて、あらゆる HDR 静的メタデータを読み込みます。
日々進化する放送技術に対し、AJA は世界中の放送、制作、ポストプロダクション、システムインテグレーターが将来に渡って使用できる技術を提供しています。
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