導入事例紹介

(2020 年 12 月 3 日) ─ NASA の高精細地球観測機器 (HDEV) は、過酷な宇宙環境で市販の商用カメラと映像機材で長期間の実験を可能にするために開発されました。国際宇宙ステーション (ISS) の船外に取り付けられた HDEV で絶え間なく記録している地球の HD ライブ映像は、複数の CDN (コンテンツ配信ネットワーク) に配信され、USTREAM だけでも 5 年間で 3 億 1800 万回以上視聴されています。将来の長期ミッションに備え NASA が最も耐久性のある商用カメラを選定する際のコストとリスクを削減するために、地上チームによってライブ映像データは分析され、カメラセンサーの品質評価にも使われました。

HDEV の導入前には、ISS の船外には SD カメラが、船内には HD カメラが取り付けられていました。信号が接続されている間中、6 つの独立したビデオストリームが地上の受信局へ送られていました。HDEV の導入によるアップグレードで、ISS の船外に 4 台の HD カメラが取り付けられました。これらのカメラは乗組員が制御する必要はなく、常に自動的に動作します。

これまでの宇宙探査プログラムでは、高価で特殊なカメラシステムが使用されていましたが、HDEV は放射線、環境温度、無重力など、宇宙での厳しい条件に耐えられる商用機材を組み合わせて設計されました。商用ビデオ機器の採用により、観測機器のコストと開発時間を最小限に抑えられました。HDEV は、打ち上げ機から ISS の船外へ、乗組員の手を介さずロボットにより自動的に運ばれ設置されました。

ISS が地球を公転している間 (90 分間に 1 回転)、HDEV のカメラは 45 分毎に日の出や日没などの見事な景色を記録しています。HDEV のカメラは、日立、ソニー、パナソニック、東芝社製の 4 台構成で、加圧された筐体に格納されています。各カメラは個別に操作でき、繰り返し動作を設定できます。同動作は必要に応じて地上から上書き制御が行えます。

HDEV の加圧された筐体内には、AJA のミニコンバーター HA5 を含む頑丈な映像制作機器が組み込まれています。HA5 により宇宙空間で HDMI から HD-SDI への変換が高い精度で行われています。

カメラが動作し続けている間、HDEV の映像は H.264 ストリームにエンコードされます。映像データは Ethernet 経由で ISS 船内に伝送され、ニューメキシコ州ホワイトサンズの地上基地へと送られます。この映像データはテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターへと転送され、リアルタイム動画配信として公開され、必要な場合にはアーカイブ映像として保存されています。ライブ配信はインターネット上で一般公開され、HDEV の映像は ISS の近況を伝える補足映像として、NASA TV でも使われました。

2014 年に開始された HDEV 実験は 5 年以上続き、AJA のミニコンバーター HA5 を含む商用映像機器およびカメラの高い性能と、過酷な宇宙環境でもダウンタイムなしで持ち堪える耐久性を実証しました。