複数の配信プラットフォームへの RTMP エンコードと、海外からの SRT フィードの受信、デコード処理を AJA BRIDGE LIVE で実現
国内最大級の eスポーツ大会「RAGE」をはじめ、プロリーグ戦や音楽フェスティバルなど大規模なライブ配信業務を担当する株式会社ヌーベルバーグ。同社は AJA のストリーミング・ターンキーソリューション BRIDGE LIVE を導入し、複数のプラットフォームへのサイマル配信を実現した。RTMP での配信と SRT での映像伝送、ライブイベントの配信業務をすべてリモートで制作・オペレーション可能な、最新ワークフローの構築を目指している。
導入先
株式会社ヌーベルバーグは日本テレビの生放送と収録番組について、技術面での請負を中心としたスタジオ技術を提供。さらに各所のロケ番組を担当する撮影チーム (ENG) や、各局への技術者の派遣などを行っている。
同社は新技術を要する案件への対応を広げていく中で「配信」に対する需要の高まりを感じ、徐々に配信関連の機材を揃えるようになった。代表取締役を務める 池田正義氏は 3 年ほど前に配信事業の専任部署を立ち上げ、eスポーツやライブイベントなどの配信現場に携わっている。2021 年 4 月には同チームが各現場で使用している配信システムに、AJA のストリーミング・ターンキーソリューション BRIDGE LIVE を導入した。
当初の課題
これまで機材ありきの現場へ同社の技術スタッフを派遣する場合、配信には vMix やWirecastなどのソフトウェアエンコーダーを使用していた。しかしキャプチャーの不具合で何度か配信事故が起きており、その解決策として、安定性と機能面を考慮したアプライアンス型のハードウェアエンコーダーの導入を検討することとなった。
2019 年に AJA の H.264 配信&収録デバイス HELO を導入。HELO は現在も使用しているが、より高性能で安定したエンコーダー製品を探求し続けた結果、同じく AJA 社が提供している BRIDGE LIVE が機材候補に加わった。同社スタッフが AJA の WEB インターフェースに使い慣れていたこともあり、すぐに運用できる BRIDGE LIVE 2 台の導入が 2021 年 4 月に決まった。
システム構成
同社案件で多くを占めている eスポーツの配信現場では、NewTek 社のライブ映像制作システム TriCaster を使用している。eスポーツのプロリーグ戦では、60 近いレイヤー数を重ねる複雑な画面構成が必要とされる場合が少なくない。その際はゲーム周りを TriCaster 8000 でまとめ、その出力を TriCaster TC1 に連動させて、カメラの画をはめ込む作業などに対応している。
完成した映像は ABEMA なら 59.94i (インターレース)、YouTube と OPENREC.tv ではプログレッシブで配信。このようなサイマル配信に対応するため、インターレース映像を最終段階でプログレッシブに変換・配信できる IP コンバーターがシステムに組み込まれた。IP 変換後の出力は、AJA の SDI ルーター製品 KUMO シリーズ で各所に分配している。
BRIDGE LIVEでサイマル放送のエンコード / デコードに対応
同社は BRIDGE LIVE を専用ケースにマウントさせ、表裏のフタを外せばすぐ設置・利用できる可搬システムの形を取っている。技術スタッフがオペレーターとして現場入りする際に、イベント会場へ配信システムを搬入。BRIDGE LIVE で RTMP エンコードと、海外からの SRT フィードの受信デコーダーとして利用している。
BRIDGE LIVE は放送向けの高品位なビデオ圧縮およびイメージ処理技術のプロバイダーとして名高い、Comprimato 社と共同開発された。高性能な 12G-SDI ビデオエンコーディング / デコーディング / ストリーミング / トランスコーディングと柔軟性の高い入出力、多数のメタデータ、そしてクローズドキャプションに対応する AJA のストリーミング向けターンキーソリューションだ。多数のコーデックやコンテナ、プロトコルによって低遅延・高品質いずれのワークフローにも対応できる設計で、コンパクトな 1RU のフォームファクターには冗長化電源も備えられている。
複数の映像ソースを一台で同時に処理できるため、YouTube や Facebook、Twitch など、さまざまな配信プラットフォームに向けて RTMP/S で配信できる。また、SRT 伝送を用いて高品質なリモートモニタリングを提供し、遠隔地から拠点間で行われるプロダクションやポストプロダクションの現場でも役立つ製品だ。さらに、ABR (アダプティブ・ビットレート) にも対応している。そのため、コンテンツ配信向けに ABR ラダープロファイル付きの H.264 や H.265 にエンコーディングしたり、OTT パッケージ化へ受け渡したりすることも可能だ。
複数の入出力ソースを、RTMP だけでなく SRT でも対応できる。このことが BRIDGE LIVEを採用した決め手だったとのこと。これについて池田氏は、次のように述べている。
「今後は SRT での伝送が増えていくだろうと期待しています。これまで海外の eスポーツや国際大会での映像フィードをもらう場合、RTMP を利用していました。しかし現場では、すでに SRT への移行が始まっています。SRT を使う機会が増えたことは、BRIDGE LIVE に魅力を感じたきっかけだったと思います。」
導入結果
今年ヌーベルバーグの配信チームが担当している eスポーツの案件では、BRIDGE LIVE を導入した同システムを配信現場に持ち込み、複数のプラットフォームへのサイマル配信に対応している。国内最大級の eスポーツ大会「RAGE」で開催されている Cygames の「Shadowverse」プロリーグ戦、そして同じく Cygames の「グランブルーファンタジー ヴァーサス (GBVS)」の e スポーツ大会でも BRIDGE LIVE を活用し、OPENREC.tv や YouTube、Twitter へ配信した。これを受けて、池田氏は次のように語る。
「安定した状態で複数のライブストリーミングをあげる現場では、BRIDGE LIVE のパイプラインで切り分けができる仕様にも使い勝手の良さを感じました。」
同社では現状の可搬システムに機材を追加し、インジェスト・編集・配信・収録をトータルカバーできるシステムの構築を進めている。MP4 でのインジェスト用には AJA のマルチチャンネル H.264 レコーダー Ki Pro GO を導入予定。これにより、バックアップ収録も可能となる。さらに構築を進めているシステムは同社が担当予定の「FUJI ROCK FESTIVAL ‘21」で、72 時間連続の YouTube 配信 (2021 年 8 月開催) を行う会場に導入予定。その他にも今年同社が携わるライブイベントには同システムを会場へ持ち込み、配信業務に対応する計画が進められている。
今後の展望
ヌーベルバーグは 2021 年内に渋谷スタジオを開設予定。将来的には、スタジオから遠隔でライブイベントなどの配信業務も行えるようにしたいという考えだ。バックアップも含め冗長化された映像ソースを伝送しながら、スタジオですべての制作とエンコードにリモート対応できるシステムの構築が進められている。8 月の FUJI ROCK に向けて更新中の配信システムを同スタジオに取り入れ、2 式の BRIDGE LIVE は常設と可搬のシステムに構成して使用する予定だ。
導入製品
取材協力
- 株式会社ヌーベルバーグ
- https://nouv.co.jp/